事務所から歩いてすぐの東京大学駒場キャンパスの構内に、ちょっと気になっている木陰があります。7月に入り暑い日も続いているので、木陰の下に設置されているベンチで休んでいる方をよく見かけます。この木の正面には一般の方も入れるレストランがあったりと、この木の周りはちょっとした公園のような憩いのスペースになっています。

なぜ、この木陰が気になっているかというと、特に造形面での大げさな主張はないのですが、人を心地よく休ませる場所として、とても良くデザインされていると感じたからです。

近づいてみると、座るときに人との心地よい距離感を自分で調節できるように、木を囲む様にベンチが設置されていることが分かります。木の周りだけ芝生が禿げてしまっていることから、この場所がとても多くの人に利用されているということがわかります。

そして面白いのが、手すりのすぐそばに開けられた少し不思議な形の溝です。これはなんだろうと少し考えていたのですが、恐らく色々な用途を考えてデザインされたものだと思います。例えば散歩中の年配の方が杖をこの溝に立てかけたり、急な大雨のときに木陰に入った人の傘立てとして、あるいはペットのリードを引っ掛けておいたりと、用途が限定されていない分、ベンチに座った人が自由に工夫して使える様になっているのだと思います。

この木陰が出来上がるまでの歴史に思いを馳せてみると、この場所を開拓し木を植えた人、何十年もかけて大切に育てた人達、ベンチを設置しようと計画した人、そしてベンチをデザインした人、そしてベンチに座ったたくさんの人達が目に浮かんできます。もしかしたら偶然が重なってこのような場所が出来ているのかもしれませんが、色々な人がこの場所を大切にしてきたのだろうという事は、木の佇まいから感じ取ることができました。木陰の下にいると心地がよいという感覚は、人類共通と言っても良いと思いますが、その心地よさをそっと演出する素朴で優しい、良いデザインだと思いました。